松尾芭蕉は「俳諧は三尺の童にさせよ」と言ったそうです。
大人になると、頭に蓄積された知識が邪魔をして、おもしろ味のない句を作ってしまいますが、無垢な子供ならば、感じたままのことを、常識のフィルターを通さずに表現してしまうため、大人が驚くような、おもしろい句を作りやすいということです。
『お~いお茶新俳句大賞』の審査員であった文化功労者の森澄雄さんは、その講評の中で、
「俳句は奇異を弄せず平凡な人間の、だれもがいだく素直な思いを深く詠い、過ぎて行く止まらぬ時間の、いまの一瞬に永遠を言いとめる大きな遊びだと思っている。しかし、たいがい俳句に齢を重ねるにつれて、奇異や技巧を弄するようになる」
引用・『俳句とめぐりあう幸せ』好本惠/著 リヨン社
と述べて、子供たちの作品の初々しさを高く評価しました。
このため、『お~いお茶新俳句大賞』の受賞作品には中学生の句も多いです。
そこで、私も童心に返って、即興で俳句を作ってみました。
カピバラを 外に干し干し 冬の空
カピバラを 集めて狭し 我がお家
カピバラというのは、女子供に人気のぬいぐるみのキャラクターです。
これを妻に語ってみせたところ、
「あんまりふざけた句を詠んでいると、他人にドン引かれるよ!?」
と、怒鳴られました。
妻の言葉によると、
「カビバラなどという、特定の人にしかわからない言葉を使ってはならない。俳句は、普遍的に受け入れられるように作るべし」
「干し干し、などは意味のない重複で、単に文字数を稼いでいるだけに過ぎない。お家などという丁寧語もふざけている」
「冬の空、などという季語は、あまりにとってつけた感がある」
とのことです。
なにより俳句は、季節の情景の美しさ、風流を楽しむものです。その観点からすると、情景より、カピバラが好きだ! という気持ちを全面に押し出してしまたこの句は、失格と言えるでしょう。
「三尺の童にさせよ」といっても、ルールや技巧をまったく無視して、好き放題に作ってはならない、ということですね。