著者:飯田 龍太
ジャンル: 俳句入門
出版社:角川学芸ブックス
発行年月:2010年04月
俳句は、結論だけをずばりと言い切る断定の文芸。才知の甘えを捨て、人生経験を重ねつつ、自分に正直な句を作りつづけることが名句への道であると説く。
俳句の特色と魅力、添削と助言、四季の眺め、忘れがたい俳人たち、さらに実作への手引として「作句心得八十章」を新たに加えた。作品に即した具体的な作句指導、すぐに役立つ実践的入門書。
・初心者向けです。
・理論より、実践の大切さを説いた本です。
・精神性や心構えがメインです。
・内容がやや抽象的です。
・巻末の作句心得が秀逸です。
『俳句は理論より実践』
というコンセプトの元に作られた本です。
著書の龍太先生は、理屈で俳句を作ることを嫌っています。
冒頭で、「無垢な初心こそ、詩の源流である」と説き、第一章の初めで正岡子規が月並みを侮辱していたエピソードをあげています。正岡子規は、明治時代、旧派のエライ俳人たちが毎月マンネリと続けていた、いつも似たような句しか出てこない退屈な句会を批判していたのです。ここから、毎月同じという意味で『月並み』という言葉が作られたようですね。
また、松尾芭蕉の名言『俳諧は三尺の童にさせよ』(童心で俳句を作った方が良いよ! という意味)を取り上げており、タイトルにもあるように、『俳句は初心』難しく考えずに、素直な気持ちで句を詠んだ方が良い、と語っています。
考えるじゃない、感じるんだ! ということですね。
この考え方は、実に初心者にはありがたいです。
俳句と聞くと、堅苦しい日本の伝統文芸というイメージが強くて、作法もよくわらかないままに下手クソな句を作ると、どんな罵声を浴びせられるかわからないという不安があります。
この不安があるため、できた句が、名句からほど遠いような駄作であると、すぐに嫌になって、俳句を辞めてしまうものです。
この点において、初心者が最初の入り口として選ぶには適した本だと思いました。
ただし、これと表裏一体で欠点もあります。
内容が抽象的であることです。
俳句をどう作ったら良いか? という技巧に関しては、第三章の『添削と助言』で触れられているのですが、全体的に精神論や心構え的な事が中心の内容です。
俳句の作り方とは、直接関係のない俳句の歴史や、有名な俳人の紹介といった周辺事情にページを多く割いており、どのように俳句を作ったら良いのか? 理論の説明が不十分で、最後まで読んでも良くわかりませんでした。
俳句と相撲が似ていると言われても、俳句作りに役立つとは思えず、初心者より、ベテランの俳人向けではないか? と思われる内容もチラホラ見受けられます。入門にしては、マニアックな内容が多いような気がするのですが……
わかりやすく初心者に俳句を教えようという当初の志が、とにかく俳句が好きだから、周辺事情や思いついたことについて、べらべらしゃべっていたいよ! という気持ちに押し流されているような印象を受けます。
このようなことを言うと、龍太先生から、
「つべこべ言わず、一年間、365日、毎日一句ずつ作りなさい。下手でも良いから、とっととやらんかい!」
とおしかりを受けてしまうかも知れませんけどね(p39参照)。
習うより慣れよ、は至言だと思います。
また、巻末には『作句心得 八十章―龍太語録抄』が収められています。
故人となった龍太先生のこれまでの著書の作句心得がまとめられており、どれもなるほどど、うなずけるものばかり。
正直、抽象的なエピソードの多い本文より、要点だけをずばっと短い言葉で並べたこの付録の方が、おもしろく、有用だと思いました。この部分だけでも一読の価値ありでしょう。
これは参考になる!読んでおいた方が良い!
と思われる、俳句入門書や句集など、あなたのオススメの俳句関連書籍を紹介してください!
ご協力いただける方は、こちらのメールフォーム、
よりお願いがします。